みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレについて

東北芸術工科大学は、第1回「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ」を山形市内の6会場で開催いたします。2014年の開催テーマは〈山をひらく〉。みちのく山形への旅の入口を開(ひら)き、震災以後の未来を拓(ひら)く、アート、音楽、詩、ファッションなど、ジャンルをこえた創造の物語がはじまります。「みちの(お)く」は「未知の奥」。秋の山形でお会いしましょう。

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芸術監督ごあいさつ

こんにちは。荒井良二です。さてぼくたち東北人は、「みちのく」って、子どもの頃からたくさん耳にしています。でも「みちのく」って言われても、さてそれがどういう感覚なのか、実はぼくたち東北人も、おぼろげにしかわかっていないのではないかと思います。

やっぱりね、「みちのく」ってひとくちにいっても、あまりにも広大な土地ですから、ひとつにくくれないんです。ずっと遠くまで、山々がつらなるひろい世界を、ひとつの山の頂から茫洋と眺めているような…「みちのく」って、そんな感覚なんです。

もしくは松尾芭蕉。奥の細道ですよ。でも、そのキーワードはパッと浮かんでも、さて、ではその細道とはどんな道なのか、どんな旅なのか、あんまり知っているわけでもない。「みちのく」って、奥が深すぎるんですよ。

だから、今回の芸術祭の開催テーマは「山をひらく」。いいですね。もうほとんど山ですからね、東北は。山をぺろってめくると、そこではいろーんな人々が暮らしている。まるで神様みたいな立場からぺろっと俯瞰してみて、隠されたそれらの山道の細部に入っていけば、ぼくら東北人でさえ知らない「みちのく/東北」の、いにしえから続く文化や暮しぶりが見えてくるのではないかと。

あと、「山をひらく」って、もちろん開催地の「山形」にかけていますが、ここは「みちのく」のひとつでしかないわけです。だから今回の芸術祭は、あくまで山形が「みちのくへの旅の入口」という感じでスタートできればとても嬉しい。ぼくらの山形を山門にして、「みちの(お)く」への入口をひらき、そこから東北を旅する人たち、子どもたちが、新しい東北のイメージを持ち帰ってくれればいいなぁと。

まずは第一回。さて、どんなふうに山がひらかれていくのか、楽しみにしていてください。

みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ
芸術監督 荒井良二/アーティスト・絵本作家

 

about_p_araiRyoji Arai……アーティスト/絵本作家。1956年山形県生まれ。日本大学芸術学部美術学科卒業。1990年に処女作『MELODY』を発表以来、数々の絵本、挿画を手掛ける。1991年、『ユックリとジョジョに』世界的な絵本の新人賞、エズラ・ジャック・キーツ賞受賞。『ルフランルフラン』で日本絵本賞を、『たいようオルガン』でJBBY賞を、『あさになったので まどをあけますよ』で産経児童出版文化賞・大賞を受賞するほか、ボローニャ国際児童図書展特別賞、アストリッド・リンドグレーン記念文学賞など受賞多数。2010年と2012年に郷里の山形市で個展「荒井良二の山形じゃあにぃ」を開催。

 


総合プロデューサーごあいさつ

東北芸術工科大学はこの東北の地で、アートやデザインの力で何が為せるのかを建学以来ずっと考えてきました。とりわけ東日本大震災のあとは、「美術大学が、アートやデザインが、この社会に役立てることはなにか?」と、切実に問い直すことになりました。私は学長として、この大学の設立理念「東北ルネサンス」に、いまこそ立ちもどる必要があると感じています。「東北ルネサンス」とは、20世紀の科学や経済が生み出した、大きな矛盾や問題を、芸術の力によって解決していこう、縄文一万年のこの東北の地から、人間の尊厳や生き方を捉え直していこう、という理念です。 今回の巨大震災では、地震と津波に加え、福島第一原子力発電所が倒壊し、制御不能に陥った科学の暴走によって、被害がさらに拡大しました。その結果、いま現在も不自由な避難生活を余儀なくされている方々がたくさんいらっしゃいます。この震災からの地域再生には、科学や経済偏重の政策だけでなく、非効率で時間がかかるけれども、郷土の文化や美を愛する人々の心が、最大の推進力になるのではないかと、思えるのです。

2011年以降の東北で、私たち大学人がキャンパスを出て、地域の未来のためにできることは何でしょうか。もちろん、高等教育・研究機関として、気骨ある芸術家魂を持った若者や、日々の研鑽から生み出された、地域を豊かにするアイデアを、東北各地にたくさん送り出していくこと。これは私たち大学の使命です。しかし、その一方で、東北のみなさんと大学が一緒になって未来をつくっていく、芸術運動のようなプロジェクトを起こせないだろうかと、震災直後の問い直しの時間のなかで考えたのです。それが、「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ」の初期構想です。 ご存知のとおり、「ビエンナーレ」とは、2年に一度のアートフェスティバルです。私たちはこのプロジェクトを、山形国際ドキュメンタリー映画祭と交互に開催していきます。今年も映画祭が、山形市の中心市街地で開催されました。何本かのコンペティション作品を観ましたが、現代世界が抱えている諸問題に、鋭く切り込む秀作がいくつも見受けられました。素晴らしいことに、この山形には2年に一度、優れた記録映画とその監督たちの肉声から、世界の「いま」に触れられる機会がある。ですからその翌年に、今度はアート作品を通して、震災以降の「私たちの、東北の物語」を、世界に発信するビエンナーレを起こしていこうと考えたのです。

それから、「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ」は、美術大学が主催するのですから、東北の若い人たちや、子どもたちを強く意識したアートフェスティバルでありたいのです。子どもたちの未来のために、このフェスティバルに注がれる創造力や協働のエネルギーを役立てたいと思っています。会場は国の重要文化財「文翔館」です。山形県を拓いてきた先人たちの歩みを感じられる建築物のなかで、「みちのおくの芸術祭」が、アーティストと東北の子どもたち、学生たち、そして地域のみなさんによってかたちづくられ、他県から訪れる人も巻き込んで、楽しく華やかに展開することを願っています。

みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ
総合プロデューサー
根岸吉太郎/東北芸術工科大学学長

 

greting_negishi-175x175Kichitaro Negishi……映画監督。東北芸術工科大学学長。1950年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部演劇学科卒業後、2005年に『雪に願うこと』で東京国際映画祭サクラグランプリ、観客賞、監督賞、主演男優賞の4冠を獲得。2006年度の各映画賞監督賞を総なめにした他、芸術選奨文部科学大臣賞も受賞。近年では『サイドカーに犬』(07)、2009年公開の『ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜』で、第33回モントリオール世界映画祭監督賞を受賞。2010年に春の紫綬褒章受章。2009年4月より、東北芸術工科大学デザイン工学部映像学科教授、学科長も務め2011年4月に本学学長に就任。

about_musicみちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ
音楽部門について

山形ビエンナーレでは、『音を超えて』をテーマに、音楽のみならず、映像、ダンス、ペインティング、パフォーマンスなどあらゆる表現とのコラボレーションで、音の広がりを体感する場を創ります。 かつて、霊山の洞窟で修験道が耳にした音は、体内の鼓動と草・木・水・風が奏でるシンフォニーであったと思います。 その音は胎内で聴いた記憶の音ともいえれば、縄文の彼方からこの先の未来に響く音ともいえます。 会場の議場ホールは山形の未来につながる洞窟です。 2014年、山形にしかない音の旅がはじまります。

岩井天志 音楽部門ディレクター/東北芸術工科大学映像学科准教授

about_logoみちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ
公式ロゴについて

東京からも仙台からも、電車でも車でも、山形を訪れるにはいくつもの山を越えなければなりません。山を越え谷を越え、時にはトンネルをくぐりやってくるのです。まさに「みちのおく」。木々が重なり森なる。森が連なり山や谷ができ、そして山脈になる。この「その先になにかを見つけにいく」という感覚をイメージしたデザインです。山形ビエンナーレに集う、アーティスト、市民、子どもたち、そして観客のみなさんが山あり谷あり、それぞれのデコボコ道を越えながら、みんなで芸術祭をつくっていきたいという想いを込めました。

小板橋基希 グラフィックデザイナー/アカオニデザイン代表

みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2014 開催概要

会期:
2014年9月20日[土]ー10月19日[日]

会場:
山形県郷土館「文翔館」(山形市旅篭町3-4-51) 9:00ー16:30 ※10月6日[月]休館
山形まなび館(山形市本町1-5-19) 9:00ー18:00 ※月曜休館(祝日の際は翌日休館)
旧西村写真館(山形市本町2-1-51) 9:30ー16:30 ※月曜休館(祝日の際は翌日休館)
東北芸術工科大学キャンパス(山形市上桜田3-4-5) 9:00ー20:00 ※会期中無休
やまがた藝術学舎(山形市松見町17-1) 9:00ー17:00 ※会期中無休
香味庵まるはち(山形市旅篭町2-1-5) 17:00ー23:00 ※日曜定休

入場料:
入場無料=文翔館ギャラリー等、山形まなび館、旧西村写真館、東北芸術工科大学、やまがた藝術学舎
※音楽部門ライブは前売3,000円/当日3,500円(文翔館議場ホール)

主催:
東北芸術工科大学

後援:
山形県、山形市、山形県教育委員会、山形市教育委員会

助成:
平成26年度 文化庁「大学を活用した文化芸術推進事業」

協賛【オフィシャルスポンサー】:
株式会社三越伊勢丹、エプソン販売株式会社、田宮印刷株式会社、山形酸素株式会社

協賛【広告スポンサー】:
株式会社ジー・アイ・ピー

協賛【広告協賛】:
PRUSIK HAIR & MAKE、有限会社まりも企画

協賛【個人協賛】:
中山眞一、東海林慎太郎、ほかの皆様(敬称略)


協力:
公益財団法人山形県生涯学習文化財団、旧西村写真館保存活用の会、山形新聞社、
山形ブラジル音楽普及協会、山形市立第一小学校、山形市立第六中学校、
株式会社JTB東北法人営業山形支店、トップツアー株式会社、うるしやまタクシー株式会社、
肘折温泉プロジェクト実行委員会、山形国際ドキュメンタリー映画祭、フォーラム山形、
山形デザインコンペティション実行委員会、ハチ蜜の森キャンドル、蔵王山岳インストラクター協会、
山形ユナイテッドアスリートクラブ、香味庵まるはち、乃し梅本舗佐藤屋、カフェ6次元、
WHITELIGHT SOUNDSYSTEM、シマウマサロン、TIMBER COURT、株式会社金入、
アカオニデザイン、ハルケン


芸術監督:
荒井良二

総合プロデューサー:
根岸吉太郎(映画監督/東北芸術工科大学学長)

プログラムディレクター:
宮本武典(キュレーター/東北芸術工科大学准教授)

音楽部門ディレクター:
岩井天志(映像ディレクター/東北芸術工科大学准教授)

宣伝美術:
小板橋基希(デザイナー/アカオニデザイン代表)