Dwell-in-g
すまうこと/やどること

9月26日(土)
13:00-14:30
講師=成瀬正憲(山伏/採集者)
いのちの学校
レクチャー
ZOOM配信

「やめろっていってんのに聞かねんだや、うちのじっちゃん。頑固なもんださげ、『ひとりで山行ぐなさ、コロナと何関係あんなだ』って。違うろや。外さ出んなっていわいでんなんがら、出んなってごどや」。「んだなや」。

去る五月初旬、何気なく耳にしたのは、山菜採りにいく祖父をとがめる、ある孫の言葉でした。山形県庄内地方でも新型コロナウィルスの陽性反応が確認され、警戒意識の高まったころで、いわゆる三密の回避を外出自粛要請と受けとめた話者と、相槌を打つ話し相手との会話は、素通りできない印象を残しました。
五月はこの土地に雪融けとともに新緑が訪れる季節。山が芽吹けばそわそわし、山菜採りに行かずにはいられない人は少なくありません。じっちゃんの眼には何が映っていたのでしょうか。

ささいなやりとりに思われるかもしれません。でもそこには、この土地の奥底に横たわるものと、現在私たちが置かれている状況が、絡まり合って示されているようにみえるのです。

山との距離から見えてくるものがあります。山に内在することで広がる世界があります。Dwell-in-gは、月山山系を舞台に、採集知がささやくこと、分解過程が伝えるもの、自分自身を配慮することをめぐって展開されるレクチャーです。それは山から、山とともに、私たちの居住場所を記述する試みでもあります。

  • 成瀬正憲(山伏/採集者)

    1980年生まれ、岐阜県出身。中央大学大学院総合政策研究科修士課程修了2009年より山形県鶴岡市在住。同市羽黒町にて精進料理を軸とした地域活性化事業に従事。食の源流を尋ねて月山の採集文化と出会う。’13年「日知舎」設立。山伏修行を通じて日本列島の基層文化を身をもって学びながら、山から山菜や手仕事の素材を採集し、制作から流通にいたる経済活動を行うことで、自然にかかわる暗黙知と全体知を今日的に展開する事業を行っている。Reborn-Art Festival 2017の共同企画者として「Reborn-Art Walk」を実施。東北公益文科大学文化人類学非常勤講師。

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