当時私はこの企画の第一回目の学生であった。記憶は曖昧であるが、この企画は慎太郎さんの持ち込みで始まったものっだったように思う。大学に自転車でやって来たと言った慎太郎さんは見るからにフットワークが軽く、「おもしろいことがやりたいんだ!」と私たちに話し始め、企画の説明をしてくれた。自分がつくった器に合わせてお菓子を作ってくれる、そんな課題にワクワクしない訳がなかった。そして、この課題は初めて陶芸の学生で展示会を完成させるというものでもあり、来場者に自分達の器で菓子とお茶を楽しんでもらうというイベントも開催した。
様々なことをこの課題からは学んだように思う。器に対する考え方や、展示会のつくり方、来場者とのコミュニケーションなど、今陶芸家となり日々考えていること、行っている事の初めの一歩であった。この企画が10年も続き、再び慎太郎さんとおもしろいことが出来ることにワクワクしている。
今回の菓子器は、和菓子を食べる時の特別感をより強調したかった為、高台を高くし取手を付け祭器をイメージしたものにした。また、祭器のようにすることである種の緊張感を生み出したかった。慎太郎さんのつくってくれるお菓子と向かい合う時間がより特別で、印象に残る「時」となることを願っている。
1989年 埼玉県生まれ 山形県在住
2015年 東北芸術工科大学大学院 芸術文化専攻工芸領域 修了
同年 山形市内に工房を構える。クラフトフェアなどを中心に作品を発表。