自分の手元にある作品が、誰かにとっての周囲になると意識したのは、この演習からです。
当時、制作した器の上に和菓子が置かれた姿を見て、作品を作った後にも先があることを知りました。菓子器の制作にあたり、ある程度は和菓子のことを想像していましたが、実際に器に置いてみると頭の中のそれとズレがありました。きっと似たような感覚を和菓子を作った佐藤屋さんも抱えていて、初めから和菓子と器を一緒に見るお客さんの方がそのままを捉えているのかもしれず、どちらにしても、このズレは一人では作れないもので、私に周りを意識させました。
今回は和菓子の色が入ること、そのサイズを程々に気にかけながら「エドゥアール・マネの絵」を作りました。もう片方は「レオン・ド・スメットの絵」です。制作期間中に学生の間に体験した銅版画について思い返したことがあり、ニードルで削った箇所にインクが入り込む様を制作の手掛かりにしました。この作品では粘土層の境目に色が入り込んでいます。
1997年宮城県生まれ。宮城県在住。2019年東北芸術工科大学美術科卒業。2020年同大学同学科研究生終了。同年、TUAD ART-LINKS 2020@Takashimaya shinjuku、3331 ART FAIR 2020に出展。部分の集合からなる作品制作を軸に、“なか”と“そと”を地続きに視たときの陶芸のあり方を模索している。
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