氏家昂大

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10年の器・10年の菓子
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私は、この佐藤屋共同プロジェクトの2011年、第一回目の学生でした。佐藤慎太郎氏との出会いで、最初の説明会の際「何でもこい!激しくぶつかろう!」という慎太郎さんの熱気は、震災直後で「このままではいけない。何か変わらなければいけない」と自問自答している当時の若者には心地よかったのを覚えています。慎太郎さんはいわゆる「若者の特権」に快く後押しをしてくれる方です。当時私は《菓子を置くスペースがピラミッド状に盛り上がった器》という、今思うととても稚拙な作品を提出したのですが、それすらも楽しそうに真剣に受け止めてくださったのを覚えています。

この10年を振り返ると、本当に激動の時代でした。東日本大震災から始まり、東京オリンピックや景気回復に浮かれ、その矢先の現在のパンデミック。そうした逆境の中でも、若い世代の人たちには「挑戦すること、心が自由であること」を忘れないでほしいと思っています。そして、それを応援する大人たちがいることを知ってほしい。

今回の作品は私が近年取り組んでいる「skin」(生命の肌)を題材に制作しました。そのテーマは自身の先天性の一側性難聴の逆境から生まれたものです。人は逆境からもがいて、もがききった先に新しい強烈な価値観を生み出せると信じています。

  • 氏家昂大

    1990年、宮城県仙台市生まれ。
    宮城県岩沼市在住。宮城県柴田郡にて制作を行う。2013年東北芸術工科大学芸術学部美術科工芸コース 卒業。2015年東北芸術工科大学大学院芸術文化専攻工芸研究領域 修了。2019年銀座一穂サロンにて個展「skin work」を開催。2019年から日本橋三越本店グループ展「現代作家茶碗特集」に二年連続参加。2021年日本橋髙島屋6階工芸サロンにて個展を開催予定。「炎芸術」期待の新人作家特集、「美術の窓」新人大図鑑など美術誌に作品掲載。「グローバル資本主義における工芸の行方」をテーマに全国各地で作品を発表。近年、海外での活動の場も増えている。
    Webサイト:https://kodaiujiie.com/

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