慎太郎さんの和菓子と器の企画展示の授業が始まった時、私は二年目の学年でした。当時はまだ実験的な面もあったのか、学生主体でどんな展示内容にするのか細かいことを自分達で決めていたような覚えがあります。私の学年は少々欲張りまして、和菓子用だけでなく洋菓子用の菓子器と茶器も作りました。洋菓子は市内の「パティスリーコウシロウ」さんにご協力いただきました。山形まなび館を会場にカフェ形式で2日間開催し、たくさんの方が足を運んでくださいました。
この課題の魅力は、自分の器にプロが作ったお菓子を盛り、お客さんにもてなし、実際に使ってもらえることと自分達で展示の細かな運営をしていくことの一連の流れを総合的に学べ、経験できることだと思います。開催間近に器の雰囲気が変わってしまった際、慎太郎さんには作品に合わせて和菓子を作り変えて頂きました。この展示を支え、より良いものにしていくために後押ししてくださり感謝しています。
私は和菓子用の器には三日月型に夜空をモチーフに赤絵で上絵付をしたものを作りました。この器には蝶をアクセントにした丸くて可愛らしい和菓子を作ってくださいました。一方、洋菓子用には珊瑚をモチーフにごつごつした質感を全面に押し出した器を作りました。あの時、もし珊瑚を模した器を和菓子用にしていたらどんなお菓子が乗り、どんな雰囲気になったのか、ちょっとした好奇心を抱き、今回の企画では再び珊瑚をモチーフに器を作ってみました。
当時と比べると形も釉薬も変わりましたが、クセの強い感じはあの頃と変わらず。どんな化学反応が起こるのか楽しみです。
1990年 鹿児島県に生まれ、愛知県在住。
2016年 東北芸術工科大学大学院芸術文化専攻工芸領域修了。
2015年 ギャラリーなつかにて個展「かけらの標本函」を開催。
2017年 ギャラリーなつか/Cross View Artsにて個展「まねる芸術」を開催。
2019年 いりや画廊にて企画展「遊びと表現の往復書簡」に参加。
拾得物をモチーフに「まねる芸術」と題し、陶素材で模刻した作品を制作。元となったモチーフよりも一回り大きく作り、一緒に並べて展示。模刻というひたすら形をなぞるシンプルな手法でそのものが持つエネルギーや時間を表現している。