渡邉吉太
東北芸術工科大学准教授
渡邉吉太
睡眠と覚醒の中間領域を「間(あわい)」と呼ぶ。一説によれば、間の状態は、心が開放された、ひとが最もクリエイティブになれる時間とされている。心の開放には、環境的ストレスをいかに遠ざけるかが重要である。この、間に手が届くための条件として導いた私たちの答えは「身体の琴線」に触れることであった。
自らの鼓動が聴こえるほどの静寂に、身を置いたことはあるだろうか。
現代の快適とされる居住空間には、絶えずエアコンや換気扇による吹き出し音が溢れ、電化製品からは微弱な電磁波が発生し続けている。想像して欲しい。それらに曝されている我々の身体は、本当に快適で幸せな状態なのだろうか。
この庵(いおり)の室内には、無音で冷水が循環するラジエーターが設えられている。このラジエーターは室内の空気を冷やし、表面が結露することで、余分な湿気を集め屋外へ排出する。結露水の排出口からは外気が取り込まれ、室内に自然発生する空気の対流によって排気される。高度に制御された冷水循環システムと、空気という流体の摂理を融合させた、人工と自然の境界上にある空調技術である。
自然の理と人間の叡智を導入して作り上げた、眠りと覚醒の間(あわい)に心身を導くための空間が、蔵王の街に建つ。
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東北芸術工科大学准教授
ディレクター
東北芸術工科大学准教授