古くは縄文時代から、あるいはそれ以前から、人類はそこらにある土や石、植物を使い道具を作ってきました。その道具を用い、さらに新たな道具や、道具ではないもの、そして新しい素材までも生み出し、現代まで「もの」を作り続けています。
何故人は「もの」を作るのか。「もの」とは何なのか。そんな問いをよく自身に投げかけます。
太古の昔、人類にとっての脅威は自然そのものでした。木を切る、動物を捕らえる、雨風をしのぐなど、山を越えた遠方から情報や素材を手に入れながら、自然に対して立ち向かうために様々な道具を生みだしました。道具は形を変え、現在まで一本の道筋で繋がれているように思います。
では道具でない「もの」とは何なのでしょうか?
祈りのためであったり、国家の威厳を示すためであったり、自身の内在世界の表象であったり、やはりそれらも何かの機能が込められた道具と言ってしまっていいのかもしれません。
我々は自然や疫病に自ら生み出した「もの」で立ち向かってきました。それは元をたどれば、山のかたちであり、いのちの形であると言えます。
前回の山形ビエンナーレ「カフェのような、彫刻のような 喫茶NELL MILL」の関連企画「山の上の陶器市」は、秋晴れの東北芸術工科大学グラウンドを会場に、いくつものテントが並ぶ美しい景色の中、買い物を楽しんでもらい、大変好評を得ました。今回はこのような事態の中、どのように陶器市を開催するかを画策し、「山の上の陶器市 ウェブ版」としてオンライン上で開催することとなりました。
リアルな陶器市のようにはいきませんが、少しでもその良さを体感できるよう参加作家との対話の場を設けることにしました。実際のように作家から直接作品の購入をできるわけではありませんが、購入前後どちらでも制作者との対話を楽しんでいただけたらと思います。
遠方でリアルな開催だったらお呼びできなかった方や、普段は陶器市にはあまり参加しないような作家さんも含め10名にお願いしました。
とても素敵な作品を作る方たちです。食器、酒器、花器、茶器など様々な器を用意しています。器によって生活に彩りを加え、美しい日常を楽しんでいただけたらと思っています。
深井聡一郎
担当キュレーター=深井聡一郎
タイトルグラフィック=小山麻子
配信拠点=東北芸術工科大学7Fギャラリー
展開メディア=オンデマンド配信、双方向LIVE配信、ネット販売
うつわやみたす(陶芸家)、大原光一(陶芸家)、栢野紀文(陶芸家)、清水真由美(陶芸家)、田村一(陶芸家)、根本裕子(陶芸家)、長谷川奈津(陶芸家)、浜坂尚子(陶芸家)、深冨陶器(新人)、吉村和美(陶芸家)